アメリカザリガニ(Procambarus clarkii (Girard))の棲管 : 休耕田での観察
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概要
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1993年の冬から1995年の秋まで,関東平野中央部,埼玉県行田市下須戸の休耕田でアメリカザリガニの棲管の観察を行った.この休耕田は毎年春に耕され,春と夏は水深10〜15cmの水があり,秋と冬は水がない.休耕田で,毎年春以降つくられる棲管を直接観察することと石膏標本20個を観察することで,棲管の形態が明らかにされた.休耕田にすむアメリカザリガニの棲管は,1本の管と1つの入り口,そして1〜2つの住房(chamber)をもつ.また,その形態的特徴から,次の3つに分類される.タイプA:横断面がほぼ円(直径3.5〜5cm)をした入り口をもつ.入り口と同じ大きさの管がゆるくねじれながら,ほぼ鉛直にのび,深さは59〜104cmである.先端部には膨らみ(住房,chamber)があり,膨らみの先端には平らな面がある.タイプB:直径5cm前後の管が下方に深さ9〜14cmまでのびる.棲管は,必ずしも鉛直でなく,休耕田面(底質面)から60°〜70°の角度をもっているのも少なくない.先端は丸く閉じることもあるが,側方に伸長して底の平らな住房をつくっていることが多い.タイプC:タイプBとタイプAが接合したもので,タイプBの住房からタイプAがのびている.これらの3つのタイプの棲管の形成は,次のように考えられる.水の多い季節(春と夏)にアメリカザリガニは活発に活動する.タイプBはこの時期の活動の拠点と考えられる.また,乾燥がはじまったころ(秋),アメリカザリガニは乾燥を避けるため深く穴を掘り,タイプA棲管の先端で冠水の季節をまつ.また,タイプCは,同じ季節に,タイプB内のアメリカザリガニが乾燥を避けるため,タイプBの住房からタイプAを掘ったものである.以上のように3つのタイプの棲管は,この休耕田におけるアメリカザリガニの1年間の生活様式を反映している.
- 地学団体研究会の論文
- 2001-07-25
著者
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