ゲンゴロウ科の背面に見られる網状印刻の観察と化石同定への試み
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概要
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化石として産出することの多い昆虫の一つに,ゲンゴロウ類などの水生甲虫があげられる.ゲンゴロウ科の頭部や前胸背板,上翅,後胸腹板など体表面には網目状の微細な模様が見られることが多く,網状印刻と呼ばれる.網状印刻の形状は種によって異なり,化石の同定に有効であることが予想される.しかしながら,日本産のゲンゴロウ科について網状印刻の検討例は少なく,化石同定に応用された例も少ない.筆者は日本産の体長約10〜30mmの24種の背面,特に上翅の網状印刻について,木工用ボンドを用いた型どり法を用いて検討し,化石同定への応用について考察した.検討の結果,特徴的な網状印刻を持つ種が多く,化石同定に有効な形質であることを確認した.また,化石の同定においては,上翅の大きさや斑紋の形状などの特徴を考慮した上で,網状印刻の検討を行うことにより,確実に同定できるという結論に達した.これをもとに,前橋泥炭層産の後期更新世のクロヒメゲンゴロウ属の化石を例に実際の応用例について示し,同地層からの化石がヨツボシクロヒメゲンゴロウとクロヒメゲンゴロウの2種に同定されることを確認した.
- 地学団体研究会の論文
- 1999-03-25
著者
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