関東平野西縁丘陵の下部更新統仏子層の昆虫化石群集と古環境
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概要
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埼玉県西部の入間川流域において,下部更新統の仏子層から多くの昆虫化石を得た.仏子層は関東平野西部の入間川河床や加治丘陵に分布し,いくつかの部層からは,アケボノゾウや植物,花粉,軟体動物,生管などの化石の産出が報告されている.しかし昆虫化石に関する報告はこれまでにない.本論では,最上部と最下部の部層に挟まれる亜炭層から,産出した昆虫やその他の化石から古環境の推定を試みた.最上部の部層からは75点の昆虫化石が産出した.ほとんどの化石はハムシ科のネクイハムシ類である.産出した化石から,湿地林や止水域を伴う湿地,という古環境が推定される.最下部の部層からは257点の様々な昆虫化石が産出した.これらの昆虫化石もまた,ハムシ科のネクイハムシ類によって占められるが,オサムシ科やミズスマシ科,ガムシ科,コガネムシ科,ハネカクシ科,ゾウムシ科など多様な昆虫化石が産出した.産出した化石から,最下部の部層の古環境は,浮葉植物を伴う止水域や,湿地林やスゲ・ヨシなどからなる湿原や周囲の森林などの古環境が推定される.また,産出した食糞性甲虫からは獣の存在が推定される.
- 1996-05-25
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