フィールディングの闘病 : 執筆活動と持病の相克
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
“beefeater"と呼ばれるイギリス人には、痛風の毒牙に魅入られる人多く、大食漢のフィールディングも例外ではなかった。五十歳にも満たぬ人生で、フィールディングは持病の痛風や喘息に加え、黄疸や水腫を患いながら、折々の痛みに耐えつつ、劇作家として、ジャーナリストとして、小説家として、また治安判事としてその責務を全うした。この闘病が短くも充実した人生を送らせた起爆剤と成ったと云えるかもしれない。 フィールディングが痛風治療に頻繁に出向いたのはイングランド西南部のバースで、当地の医師達の処方と鉱泉の効用で一時的だが健康回復を果たす。やがて病状は悪化してバース行きが叶わなくなると、彼はロンドンの医師達の治療に身を委ねつつ、痛風治療と称して、腹水抽出法やミルク・ダイエットにタール水飲用等の民間療法を片端から試みている。不屈の精神力と旺盛な好奇心で持病と立ち向かい、当代の医療関係者や治療法を諷刺の対象と化すユーモア精神を有し、胡散臭い治療法を実践するだけの柔軟性を彼は持ち合わせていた。 人生の節目に持病が再発する皮肉な巡り合せに、萎える事無く、気力を奮って難局に立ち向かうフィールディングの姿勢は並外れたものがあった。この闘争本能が彼をしてどの分野でも当代一流の人物ならしめたのだろう。そこに病と立ち向かう闘病生活を物書きの種と転じさせ、病との付き合い上手なフィールディング像が見えてくる。
著者
関連論文
- フィールディング劇管見その1 : 『親指トム一代記』から『悲劇中の悲劇、親指トム一代記』へ
- フィールディング劇管見その3 : 『ウェールズ・オペラ』から『グラブ街オペラ』へ
- フィールディング劇管見その2-Don Quixote in England : A ComedyからThe Coffee-House Politicianへ-
- フィールディングの闘病 : 執筆活動と持病の相克
- フィールディングの離反と回帰 : ウォルポールをめぐって
- 〈論文〉Fieldingのセンチメンタル帰向
- Fielding考--作家は"定食屋"の如し
- 火宅の人フィールディング
- 諦観からの軌跡 : The Journal of a Voyage to Lisbon を中心に
- 『大盗ジョナサン・ワイルド傳』の宗教性-教誨師の扱いをめぐって
- 内田百?トロレンス・スターン-『阿房列車』と『センティメンタル・ジャーニー』を中心に
- Fielding's Miscellaniesの宗教的要素について
- 罪と罰の定め : フィールディングの小説において
- 名僧の条件 :フィールディングの視点から
- フィールディングの宗旨とその背景
- 再婚と宗教倫理の狭間 : フィールディングの場合
- Ameliaの宗教性をめぐって
- The Journal of a Voyage to Lisbon再考--Fieldingの遺志をめぐって
- PamelaとShamela--パロディとしての「シャミラ」
- フィ-ルディング管見--あの世への誘(いざな)い
- The Rise of the Novel再考--Fieldingへの解釈をめぐって
- Tom Jonesの劇的要素をめぐって
- Henry Fieldingとジャコバイトの叛乱--Tom Jonesをめぐって
- Tom Jonesの宗教性をめぐって
- Abraham Adams牧師の系譜--Joseph Andrewsを中心に
- Henry FieldingのJonathan Wild--ハ-トフリ-夫人の物語を中心に
- ヘンリ-・フィ-ルディングとメソジスト達
- 「シャミラ」とフィ-ルディング
- Lawrence Sterneのカトリック観について
- Laurence Sterneの医学諷刺
- フィールディング劇管見(その1)『親指トム一代記』から『悲劇中の悲劇、親指トム一代記』へ
- フィールディング劇管見(その1)『親指トム一代記』から『悲劇中の悲劇、親指トム一代記』へ
- 書評 河村民部著『「岬」の比較文学:近代イギリス文学と近代日本文学の自然描写をめぐって』
- 火宅の人フィールディング
- 諦観からの軌跡--The Journal of a Voyage to Lisbon を中心に
- フィールディングとヘンデルの接点
- フィールディングとヘンデルの接点
- 『トム・ジョウンズ』と『源氏物語』
- 『トム・ジョウンズ』と『源氏物語』
- Munay G.H.Pittock,Jacobitism.〔和文〕