フィールディングの離反と回帰 : ウォルポールをめぐって
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概要
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英国憲政史上にその名を残すホウィッグ党のウォルポールは二期、二十余年にわたり政権を担い、今日の議院内閣制の基礎を築いたとされる。二十世紀の半ばに活躍した歴史家ネイミアによってホウィッグ史観は否定されたが、論者は新ホウィッグ史観に立ち、ウォルポールの政界遊泳術を、またフィールディングが同宰相を如何にとらえたかを検証するのが本論の狙いである。当時の英国にあって、政界の重鎮に献呈の辞を捧げる文人は数知れなかったが、文学への理解を欠くウォルポールに庇護を求めるのは徒労に等しい。だが宰相と親しい又従姉のモンガギュ夫人の口添えもあり、青年フィールディングは自作に献辞を添える。宰相の素っ気無き対応は当初から予想されたが、フィールディングは次第に反発を強めていった。その後、ホウィッグ党の論客としてのフィールディングのジャーナリスト活動を通し、双方が認識を新たにしたのではなかろうか。ウォルポールは予約出版されたフィールディングの『雑文集』を十部購入している。一方、改作が極めて稀なフィールディングだが、ウォルポールを揶揄した『大盗ジョナサン・ワイルド傳』に最晩年に筆を入れたのも、単に下野した元宰相に対する諷刺の命脈が尽きたせいとばかり決められない。転地療法に向かった際の旅日記『リスボン渡航記』の中で、同宰相を高く評価している記述が何よりの証となろう。
著者
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