草地の種構成はなぜ変化するのか : 資源の利用をめぐる種の戦略
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概要
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近年,アメリカのTILMANやオランダのBERENDSEらの植物生態学の研究者らによって,自然草地で優占草種が変化するメカニズムについての解明が進んだ。本総説では,植物生態学の分野で近年得られた知見を整理し,あわせて,日本の造成草地における構成草種変化の問題点を明らかにしようとした。1.TILMANとBERENDSEの理論は,ともに土壌中の窒素レベルの経時的変化と種間の窒素に対する生理的な反応様式の違いが草地における優占草種の変化をもたらすという点で一致するが,両理論はどのような生物特性が優占種の変化に関与するかで異なっている。2.低土壌養分条件下で優占をもたらす特性として,TILMANは,根の分配率を高くすることにより他の種が利用できなくなるレベルまで土壌中の無機養分を低下させる能力を,BERENDSEは,葉の寿命を長くしたり,家畜による採食率を下げることにより体内で長い間養分を保持する能力をあげている。3.日本の多くの造成草地では,草地の経年化とともに,長草型から短草型草種,あるいはシバ主体草地へ移行する傾向がみられるが,この草種構成の変化も,TILMANやBERENDSEらの理論で説明できる可能性がある。
- 日本草地学会の論文
- 1997-07-30
著者
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