マングローブ林下に生息する巻貝および二枚貝の硫黄栄養 : 安定同位体によるインドネシア・中部スマトラ域についての事例研究
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概要
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インドネシア・中部スマトラのマングローブ林下に生息する巻貝および二枚貝の硫黄栄養を安定同位体組成(^<34>S/^<32>S ; δ^<34>S表示)を用いて研究した.3種のマングローブ(ヤエヤマヒルギRhizophora mucronata, Rhizophora apiculataおよびオヒルギBruguiera gymnorrhiza)は, 基質泥に含まれる, 海水硫酸の微生物還元に由来する同位体的に軽い硫化物硫黄(δ^<34>S=-20.3から-11.9‰)の一部を同化していることが, その低い硫黄同位体組成(δ^<34>S=-14.4から-6.2‰)から推察された。干潮時に盛んにマングローブ落葉および腐朽落葉落枝を摂食している3種の巻貝(キバウミニナTerebralia palustris, マドモチウミニナTerebralia sulcataおよびセンニンガイTelescopium sp.)の軟組織の硫黄同位体組成(δ^<34>S=-2.5から+9.5‰)に基づき, 軟組織に取り込まれた硫黄の40∿70%がマングローブ葉由来であると推察された。残りの硫黄栄養はおそらく直接, あるは間接的に海水硫酸に由来すると推定された。今回測定した硫黄安定同位体組成から, これらマングローブ林下の底生動物のうち, 通常目視観察では推定困難な硫黄栄養源について, 直接的な証拠が得られた。マングローブ林下の底泥中で生成された, 微生物起源の軽い硫黄源は, 近隣海域の一般的な巻貝(マイノソデガイStrombus (Euprotomus) aurisdianae ; δ^<34>S=+14.4‰)や二枚貝(アカガイ, Anadara sp.;δ^<34>S=+10.3‰)にも及んでいることが, その軟組織についての硫黄同位体組成から推察された。
- 2001-06-30
著者
-
山中 寿朗
Research Fellow Of The Japan Society For The Promotion Of Science Institute Of Geoscience University
-
溝田 智俊
Faculty of Agriculture, Iwate University
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