アブハズ語におけるシュワー
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概要
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北西カフカース諸語に属するアブハズ語の母音組織は、一般には2つの母音音素、aとシュワーschwaを持つものとされている。しかしこのシュワーは無アクセントの下で様々な出没が観察される。このため北西カフカース諸語(特にカバルダ語とアブハズ語の方言関係にあるアバザ語)の一部の研究者よりこのシュワーは音素とは認められないのではないか、との主張がなされた。このような主張は、世界の言語において母音音素が一つのみの言語は存在しない、とのトゥルベツコイやヤコブソンらの伝統的な考えとは相容れないために白熱した議論が行われてきた。本稿はアブハズ語のインフォーマントから得られた資料を用いて、今日まで詳細に研究されることのなかったアブハズ語の無アクセント下におけるシュワーの出没の条件を調査し、シュアーの出没が予測可能であることを議論している。まず、シュワーの出没をアクセント(アブハズ語のアクセントは強さアクセントstress accent)の後ろの位置及び前の位置に分け、それらの音環境での「聞こえ度sonority」の大きさによる子音の配列順序とシュアーの出没の関係を調査している。この調査の結果、無アクセント下におけるシュアーの出没は、一部の形態における語末の位置でのシュワーの出没を除くと、「聞こえ度」の大きさによる子音の配列順序、子音連続とその環境、及び形態論的特徴によって条件付けられていることが判明した。著者はこれらのシュアーの出没の諸条件を、the principle of sonority, Kuipers' Rule, Spruit's Rule, Trigo's Ruleという規則及び原理によって定式化している。
- 2006-03-31
著者
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