昆虫群集構成者間に生じる植物を介したプラスの間接効果(<特集1>生物多様性科学の統合をめざして)
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概要
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昆虫による被食が植物の質的・量的な変化を引き起こし、他の昆虫に影響を与えるというプロセスを通って、昆虫間に間接効果が生じることが明らかになってきた。これまでのこの植物を介した間接効果の研究では、植物の変化として誘導防御反応に注目していたために、マイナスの間接効果を検出した報告が非常に多い。しかし、植物の変化として被食による構造の変化と補償生長に注目した場合、プラスの間接効果が生じる可能性がある。そこで本総説では、植物上に構造物を作る昆虫としてエゾノカワヤナギSalix miyabeanaに葉巻を作る鱗翅目幼虫と、植物に補償生長を起こさせる昆虫としてジャヤナギS. eriocarpaにゴール(虫こぶ)を形成するヤナギタマバエRabdophaga rididaeに注目することで、プラスの間接効果を検出した研究を紹介した。さらに、ヤナギの特徴である補償生長に焦点を絞って「プラスの間接効果がどの様な条件で生じ、どのような影響を昆虫群集の多様度に与えるのか?」についても考察した。攪乱環境に適応した植物上の昆虫群集では、補償生長を介したプラスの間接効果が普遍的に生じている可能性が高いことを指摘し、攪乱頻度と間接効果が昆虫群集の多様度へ与える影響についての予測をたてた。
- 日本生態学会の論文
- 2005-08-31
著者
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