看護婦大関和の著述からみた社会活動の今日的意義
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概要
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19世紀末、日本にナイティンゲール方式の看護教育が英米の婦人宣教師らによってもたらされた。日本の近代看護教育はここから始まる。この教育を受けた看護婦は少数でトレインドナースTrained-Nurseと呼ばれた。「大関和(ちか)」は、わが国最初のTrained-Nurseの一人である。父は藩の内紛により失脚するが、下野国黒羽(栃木県那須郡黒羽町)の家老職を勤め、彼女は上級武士の娘としての素養を身につけて育った。やがて結婚するが、一夫多妻主義の夫に従えず2児を抱えて自らの意志で離婚した。その後、植村正久牧師に出会い、一夫一婦制に共鳴し、キリスト教精神を学び洗礼を受けた。また、植村を通してナイティンゲールを知るところとなり、看護がキリスト教精神を実践する場として最善と考え看護婦への道を進む決意をした。母校の学長であり、基督教婦人矯風会会頭であった矢島楫子と共に女性の地位向上をめざす社会活動に加わり、衛生面の啓蒙普及活動を担当した。矯風会活動は大関の力量が生かされる場であった。当時、看護婦が社会から必要とされたにもかかわらず資格の法規制がないため、利益追求の低質な看護の出現に憂慮したのである。彼女は行政へ働きかけ、看護婦界ヘ呼びかけ、組織づくりや廓清運動を起こした。彼女の卒業時期から数えて12年目に東京府令看護婦規則(1900)、その後15年を経て内務省令看護婦規則(1915)が制定された。彼女は生存中に集大成としての看護書2冊と多くの著述を残した。これらの史料から窺い知る所は、「看護婦」には社会的使命があり、職業として社会の要請に応えるために自ら看護の質の向上に努め、その質を守るには看護婦自身が団結して行動を起こし、法規則を求めていく必要があるのだと社会活動を通して示し説いたのである。
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