わが国の近代看護における看護管理概念の形成過程 : 看護婦が書いた4冊の看護書の紹介を含めて

概要

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日本の近代看護教育は,ナイチンゲール看護を継承して始められた。最初の卒業生(Trained Nursesと呼ばれた)は1888 (明治21)年,東京慈恵医院看護婦教育所,京都看病婦学校(同志社),桜井女学校附属看護婦養成所から誕生した。この3校の卒業生らによって,わが国最初の看謹書四冊が出版された。田中定(同志社)は,滋賀県の伝染病対策速成看護婦養成のテキスト「赤痢虎列剌病看護法(1895)」を作成し,平野鐙(慈恵)は市井の人々を対象に「看病の心得(1896)」を伝染病看護法として著した。大関和(桜井)は,看護婦を対象に倫理観を基盤にし,看護の技術的な水準を維持したいと願って二冊の看護書「派出看護婦心得(1899)」「実地看護法(1906)」を著した。看護書四冊が著された1895〜1908年代は,日清戦争後(1895)全国的に伝播していったコレラ赤痢等の伝染病蔓延の健康問題があり,看護需要増に伴う看護婦不足や質の低下が社会問題となっていた。このような状況の元,Trained Nursesは,伝染病対策の活動のみならず看護婦のあるべき姿を実現するために,自らが著作を以て質の向上を訴えずにはいられなかったのである。大関は,看護の教育を充実させ,看護法を普及させ,資格の法規制が必要であると考えて活動した一人であった。この頃の看護活動の場は看護婦会と病院であった。看護管理機能の芽生えは,看護提供組織としてTrained Nursesが主体的に創出した看護婦会による派出看護から始まった。派出期間内の看護の成果は,看護婦の力量にかかっていたので,看護婦に成果目標と成果責任を意識させることになった。派出看護は病人中心の看護の実現を可能にし,同時に看護婦の職業意識確立への意欲を強くかきたてた。そして,看護婦規則制定への牽引的役割を果たした。初期の看護管理機能は,看護活動の自律性が芽生えたこのような背景から生じたとみられる。それは,看護婦会という専門性の高い職業集団一つ一つの中で職務を整備する取り組みが始まったこと,看護婦会同志が連携することによって社会的な活動(団体結成,当局への陳情等)へと組織化していったことが証明している。看護管理の課題は時代を超えて今日も存在するが,看護の本質を見失わない限り,時代に見合った看護提供方法の創出が可能であることを看護書四冊や看護婦たちの活動が示唆している。
和歌山県立医科大学の論文

わが国の近代看護における看護管理概念の形成過程 : 看護婦が書いた4冊の看護書の紹介を含めて

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