東京都陣馬山麓上案下のヒラタハバチ類(ハチ目,ヒラタハバチ科)
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概要
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八王子市上案下(標高約400m)において1973年から2002年までの間に39回(日)の採集調査を行い,3属19種に分類される850個体のヒラタハバチを得た.採集は,最長9mまで延長できる長竿に口径42cmまたは50cmの捕虫網を取り付け,これを使っておもに樹上に飛来する成虫を捕獲する方法で行った.850個体のうち45個体が雌,805個体が雄であり,また採集された19種のうち,8種は雄のみしか採集できなかった.これは,長竿を用いた採集法が雄の採集にきわめて有効である一方で,雌の採集に有効な方法を見いだせないことが原因である.採集された19種のうち,幼虫がイタヤカエデを食するPamphilius komonensisカエデヒラタハバチと幼虫がサクラ類を食するP. volatilisシマヒラタハバチの2種が,総個体数の69%にあたる588個体を占めた.これにP. ishikawaiツヤクロヒラタハバチ(寄主植物不明),P. takeuchiiウスモンヒラタハバチ(寄主植物:イタヤカエデ),Onycholyda similisオオコモンヒラタハバチ(寄主植物不明),P. benesiハシバミヒラタハバチ(寄主植物:ハシバミ),P. togashiiトガシヒラタハバチ(寄主植物不明)の5種を加えると7種で全19種850個体の94%にあたる799個体となる.カエデヒラタハバチとシマヒラタハバチの2種がとくに多く採集されたのは,主採集地にこの2種の寄主植物であるイタヤカエデとソメイヨシノが多いことが一因である.これまで一地域のヒラタハバチ相の解明を目的とした調査の結果が公表されたことはない.ハバチ類,ハチ類,または全昆虫類を対象とした調査では,県レベルで石川県から6属27種,福井県から3属18種,埼玉県から4属13種,さらに狭い地域では加賀白山から4属10種,兵庫県の扇の山・氷ノ山から3属8種のヒラタハバチ類が記録されている.上案下における今回の調査結果(3属19種)は,調査地域がきわめて限定されているにも関わらず,本州中部の低山地のヒラタハバチ相の実態をもっとも正確に反映したものと考えられ,各地におけるこれまでの調査データが実際のヒラタハバチ相のごく一部を解明したに過ぎないことを示唆している.
- 2002-12-25
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