帯笑園における鉢物献上について
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概要
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駿河原宿植松家の家園帯笑園について,大名を中心とする貴顕の訪問とそこでの献上品拝領品について,贈答のありようとその特徴をあきらかにした.その結果,貴顕の帯笑園訪問は,先例や先規に従う儀礼性を有しており,拝謁や名前呼び立てといった行為で訪問者の権威を植松家に分有させた.訪問者には所望により斑入りや枝変わり,あるいは舶来の珍しい鉢植が贈られ,返礼として,書画・工芸品といった品物や金銭が植松家にもたらされた.献上後すぐ返礼がなされることもあるが,年数が経てからの返礼もあり,それは,訪問者との間の関係が継続的であることによる.継続性は通行の度に庭を訪れることにより維持される.庭での交歓が品物の贈答の背景にある.返礼として植松家が望んだのは書画や工芸品であり,植松家は代料を受け取らないとする家憲により,園内の草木を市場交換の外に置き,返礼が品物,特に書画や工芸品でなされることを期待した.献上は,時に「御用」ととらえられ,公的性格を帯びることがあった.
- 1998-03-31
著者
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