駿河原宿帯笑園の訪問者についてII : 宿内とその周辺からの訪問者
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概要
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帯笑園は,宿内,宿外ともに見物人がひんぱんに訪れる庭である.宿内の人々でたびたび訪れるのは,縁戚関係にある者,出入りの医師や職人,宿の有力者などである.彼等は,花の見物に日常的に訪れており,植松家の家族と共に花見など庭での催しにも参加している。彼等は又,書画観賞や煎茶,楽器の演奏,さらには銃に使用する薬品の製造実験などを共に行っている.したがって,帯笑園は,気のあった仲間同士の交遊活動の場であったと考えられる.宿の有力者たちは,共に宿を運営するにあたって,遊びを通じてつながりを確認し,結束を強める働きを有していたとも言える。一方では,宿の公的な行事や私的な儀礼に付随して帯笑園の訪問がなされる場合がある.年寄や牧士を勤める季敬が,宗門改めや牧の見回りといった年中行事終了後,上役や同僚を庭の見物に招いているのである.この時には茶菓の饗応がなされる場合もある。また,末弟の養子縁組に関わる一連の儀礼においても,儀式終了後,関係者が庭を見物している.したがって,帯笑園は,格式ばり堅苦しい行事や儀式終了後,くつろいだ雰囲気のもとで,自由な交遊がなされる場でもあったのである.
- 1997-03-28
著者
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