稲垣満次郎の植民論(その2)
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概要
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稲垣満次郎は、植民は「シビライゼーション」を進めるものでなければならないと主張する。その要素として(1)物質上の進歩(2)社会の秩序の進歩(3)政治上の秩序の進歩の三つがあげられている。これは欧米列強の植民地獲得を正当化する論理を逆手にとったうえで、日本が植民事業に乗り出そうとするしたたかな発想にもとづいていた。同時にこの「シビライゼーション」という言葉にこめられていたのが、いわゆる西洋先進国の「文明」ではなく、「道徳」を重視する彼独特の文明観・文化観であったことは注目すべきことである。この「シビライゼーション」の社会を日本人が植民することによって、オーストラリアなどにつくろうとした。こうした「シビライゼーション」を前面に押し立てた植民論に、稲垣の独自性が存在するといえる。またそうした主張の背景には、アメリカ合衆国が外交の指針としていたモンロー主義に倣って、オーストラリアと日本が太平洋においてそれを実践するという構想があったのである。
著者
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