自動車労働者の職業経歴 : トヨタ定年退職者調査から
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概要
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本稿では,1970年前後にトヨタ自動車を定年軍職した長期勤続者を対象として,彼らの職業経歴,企業内職場経歴,および子どもの職業選択について検討している。調査対象者は1910年代に生まれ,その大多数は義務教育終了後に就職しているが,トヨタ自動車への入社時期と勤続年数には,かなりの差異がみられる。豊田自動織機時代に入社したグループの平均勤続年数は約36年と最も長く,定年退職時の地位も相対的に高い。それに対して,不安定な職業遍歴と敗戦による職業キャリアの断絶を経て30歳前後で戦後,入社したグループの平均勤続年数は約24年と最も短く,昇進を経験しないで退職したケースも存在する。入社時の配属職場が主要職場になっているケースが大多数で,ここで熟練・技能を身につけて定年退職を迎えている。しかし,50年争議後の経営優位の労使関係とそのもとでの技術革新の展開にいち早く適応したケースと手工的熟練にこだわりをもち続け,職人気質を押し通したケースでは,昇進にかなりの差異がみられる。子どもの職業選択では,男の子の約3割が2代目のトヨタ労働者になっている。女の子でも同様の傾向がみられ,約2割がトヨタ労働者と結婚している。トヨタ労働者の世代間再生産は最近のヒアリング調査によっても確認されている。「職業キャリアの世代間継承」については今後,さらに立ち入って検討すべき研究課題として残されている。
- 札幌学院大学の論文
- 2003-12-25
著者
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