日本型能力主義と「中高年」の苦悩 : 自殺の急増とその背景を中心に
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概要
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本稿では, 最近の日本における自殺の急増とその原因について検討している。1998年度において自殺者数と自殺率がともに急増したが, 50代男性の増加が特に著しい。この世代は翌年, 翌々年においても高い自殺率を維持しており, 戦後最高の自殺率を記録している。その原因をこの世代に固有の特徴や模倣に求める見解もみられるが, 人員削減や出向・転籍等の雇用調整に主要な原因が存在するというのが本稿の立場である。雇用調整が大規模に実施された景気後退期には, 必ず自殺率が上昇している。しかし, 失業等にともなう生活苦だけが自殺を生み出すのではない。それとならんで, 社会生活の中心である職場という中間集団の急激な変動やその喪失という要因が重要である。熾烈な競争原理を特徴とする日本型能力主義の徹底が職場社会からの「中高年」層の排除と職場秩序の動揺を, 他方では離婚等の家族社会の動揺を生み出している。こうした中間集団の喪失や動揺が「中高年」層の自殺を促進している。
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