「細雪」とともに (承前) : 戦中戦後の谷崎潤一郎「壮年期-谷崎潤一郎論」その八
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
「細雪」はリアリズム小説あるいは「関係」小説として「猫と庄造と二人のをんな」につながるものだが、前者において谷崎が「関西」とほとんど一体化するところまでいったのに対し、「細雪」のほうはあらたに「関西」から距離をとり始めようとする動きのなかから生まれる。「猫と庄造」以前の「情熱恋愛」の物語とは異なり、リアリズムの「風俗習慣小説」として、阪神間ブルジョア女性の声の空間を蘇らせようとする書き方になっている。その中心には発言の少ない「陰翳的存在」の京おんな雪子がいて、「細雪」は文化論文明論文学論としての「陰翳礼讃」を小説のなかに取りこんだ「雪子礼讃」の物語になった。その事情を、戦中戦後の谷崎の生活を踏まえて明らかにする。
- 2004-07-30
著者
関連論文
- 「関西幻想」の深まり : 「蘆刈」と谷崎と二人のおんな
- 「細雪」とともに (承前) : 戦中戦後の谷崎潤一郎「壮年期-谷崎潤一郎論」その八
- 「細雪」とともに : 戦中戦後の谷崎潤一郎「壮年期-谷崎潤一郎論」その七
- 「春琴抄」前後 : 「壮年期-谷崎潤一郎論」その五
- 老いのモダニズム : 「壮年期-谷崎潤一郎論」その十一
- 「京都小説」の戦後 : 「壮年期-谷崎潤一郎論」その九
- 「京都小説」の戦後(承前) : 「壮年期-谷崎潤一郎論」その十
- 「倚松庵」の時代 : 「壮年期-谷崎潤一郎論」その六
- 歴史ロマンスの夢 : 谷崎潤一郎の「大衆小説」
- 「卍(まんじ)」の試み : 谷崎文学の転回点
- 「蓼喰ふ虫」の達成--谷崎潤一郎青年期の総決算
- 芸術の西洋--谷崎潤一郎大正期の唯美的側面
- 自己不確実と「悪」--谷崎潤一郎青年期の問題
- 山の手から見る眼--谷崎潤一郎論-1-