現代日本人における「道徳性」に関する意識構造の心理学的解明の試論 : 「道徳性尺度」作成のための予備的調査
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概要
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現在、発行されている小学校および中学校の「道徳」の教科書で扱われている道徳の内容を表わす下位項目と、かつて使われていた「修身」の教科書で扱われていた徳目に対して、現代日本人が、どのような意識を持っているかを検討するに先立ち、それら111項目が道徳性としての適切性・重要性をどの程度、有しているかを検討すると共に、死語となっていないかどうかの確認をすることにした。調査1では、教職にあり、「道徳」について興味・関心の高い成人5人を対象に、道徳的に「良い」行為がどの程度、重要で、適切なものであるかを判定して貰うことにした。調査2では、「道徳」について特に興味・関心がある訳ではない青年女子39人を対象に、その言葉の意味が分かるかどうかを判定して貰うことにした。意味不明な言葉、イメージできない言葉について、意識構造の調査を実施することは無意味である故、先ずこの篩い分けをする必要があると考えたからである。適切性および重要性の評価点についてのクロス表を作成したところ、適切性・重要性共に、上位1/3に入る項目、即ち道徳性を考えるに当たり、非常に適切であり、且つ重要だと判断された項目は27項目であった。思いやり、人間愛など抽象度の高い「愛」に関する項目、「平等」に関する項目が多く見られた。これに対して、下位1/3に入る項目、即ち道徳性を考えるに当たり、適切でなく、且つ重要でないと判断された項目は26項目であった。詳細を見ると長幼の序、恩、義理、恥を知るなど古めかしい響きのある項目、遵法の精神など「ルール」に関する項目、家族愛、きょうだい愛など具体性の高い「愛」が見られた。また従来、日本人の特徴として良しとされていた、真面目、謙遜なども低い評価がなされていることが分かった。調査2では、10名 (25.64%) 以上によって意味不明と選択された項目は、敬虔、長幼の序、遵法の精神、公徳心などが選定され、「ルール」に関する言葉が死語になりつつあることが分かった。また重要性の評価点を用い、クラスター分析を実施したところ、「思いやり」が道徳性において重要な地位にあることが示唆された。しかし抽象度が高く、これを世代間伝達していくのは難しいように思われる。また従前の日本人の良さと言われていた行為は、強権によりやらされていたものと捉えられており、それ故、現代ではやらなくてもよいと判断され、評価が低くなったように思われる。また、それらの行為は青年たちにとって死語になりつつあることも認められた。
- 2004-03-15
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