ロマンス・壁画・教会彫刻 : 『ローマの善女フローレンス』をめぐって(文学編)
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概要
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中英語ロマンス『ローマの善女フローレンス』は当時人気の「受難の王妃」の物語である。ローマ皇后であるヒロインは男たちの奸計により濡れ衣を着せられ流浪する。後に癒しの業を身につけた彼女は、悪人たちの罪を告白させた上で業病に苦しむ彼らを治療してやる。本作品の類話は欧州各地に見られるが、『ゲスタ・ロマノールム』所収のものが『フローレンス』に近く、一方ミラクル・タイプと称される聖母奇蹟譚はやや趣を異にしているというのが定説である。この物語は、中世末期のイートン・カレッジ礼拝堂の壁画とノリッジ大聖堂内のボーチャン礼拝堂のアーチ型天井浮出し飾りでも扱われている。両礼拝堂はともに聖母に捧げられたものである。本論文では、『フローレンス』と、『ゲスタ』タイプとミラクル・タイプ、さらにイートン壁画およびノリッジ浮出し飾りの物語展開を比較検討することによって『フローレンス』の位置づけを明らかにし、中世後期のイングランド人の心象風景を聖母崇敬の観点から探る。
- 1999-09-30
著者
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