『カンタベリ物語』諸写本に見られる語順の異同について(言語論)
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概要
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英詩の父チョーサーは統語法にも文体的技巧を擬らしたと言われる。本稿では詩人の代表作『カンタベリ物語』(c.1387-1400)の15世紀の諸写本において、写字生達が、初期写本では保たれているチョーサーの韻文的語順にどのような反応を示したかを、いくつかの観点から分析する。その結果、(1)語順のヴァリアントは15世紀も後期になるにつれ増加している、(2)ヴァリアントは行端よりも行中央部に現れることが圧倒的に多く、脚韻に支障をきたすことは稀である、(3)断定はしにくいが、写字生にはチョーサーの詩行を散文的に書き改める傾向が一応認められる、(4)その際、韻律をある程度犠牲にしていることが多い、(5)しかし文意に変化が生じたり、解釈が困難になっているヴァリアントは意外に少ない、(6)ただし文体面では微妙な影響が及んでいることがある、といった事実が認められた。
- 大阪外国語大学の論文
- 1990-03-31
著者
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