心理療法の効果判定に関する研究の方法論的考察(第1部)
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概要
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今日,教育は効果があるとかないとかといったことを,一般的に議論することは不毛であると同様に,カウンセリングや心理療法が効果をもたらすか否かについて,一般的に議論するのも意味がない。教育や治療において問題になるのは,「どのような人(教育者やセラピスト)が,どのような人(被教育者やクライエント)に対して,どのような目標・手段,あるいは条件でかかわるとき,どのような結果がもたらされるか」ということである。このことを,カウンセリングや心理療法にあてはめていえば,「セラピストとクライエントとが,どのようにかかわりあうとき,どのような変化が生じるか」ということである。すでに別のところで論じたように,心理療法の定義は,人によってまちまちである。しかし,セラピストとクライエントとが"相手"(Partner)としてかかわりあうというのが,心理療法の現代的意義である(田畑,1971)。ところで,心理療法の効果判定は,セラピストとクライエントとの両者の心理治療的活動にもとづいて起こるところの,クライエントの症状の軽減・除去,あるいは人格・行動の変容を,客観的に把握するために行なわれる。しかし,かかる効果を客観的に測定し,評価しようとする側面や方法は,多種多様である。なぜならば,治療による変容が,身体的因子,人格的因子,社会的因子,さらには文化的因子をも含み,多次元的であるからである。本論文は,心理療法によってもたらされる"結果的側面"に関する評価研究に,方法論的省察を加えようとするものである。すなわち,ここでは主題に関して,(1)心理療法の効果とは何か,(2)治療効果の評価法,(3)治療的人格変容の性質,(4)統制群法による効果判定の厳密化,(5)わが国の現状での問題点,の5点について考察をすすめる。それによって,心理療法の効果判定の評価研究の可能性と限界を明確にしたい。
- 千葉大学の論文
- 1971-07-31
千葉大学 | 論文
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