海洋に係わる学術の統合的推進の必要性 : 包括的海洋政策策定への提言(第19期海洋科学研究連絡委員会報告)
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概要
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(検討の経緯)本研究連絡委員会は一貫して海洋の研究教育に係わる課題について検討してきた。その過程で,わが国における海洋の学術および行政の一貫性が弱いのは,包括的海洋政策がないためであるという認識を強くした。(背景)海洋の合理的利用のためには,海洋に関する科学技術の推進と人材育成,その成果の国民への普及,海洋産業の振興,海洋をめぐる外交政策など,多面的な施策が必要である。一方,わが国の海洋関連法令や行政部署のまとまりは弱く,総合化が進む海洋科学技術と国際性が強まる海洋産業の進歩を阻害する要因になりつつある。海洋政策は必然的に国際性を強く帯び,そのありかたは,その国の国際社会における立場の表明と解釈される。わが国が国際世界においてリーダシップを発揮しようとすれば,国の立場を鮮明にしなければならない。そのためにも,国際法に準拠しつつ,確固たる独自の海洋政策を策定しなければならない。わが国の海洋行政のまとまりを図ることは,国内における行政の効率化や学術の総合的振興のみならず,わが国の国際的立場を鮮明にすることにも益する。(包括的海洋政策を審議する機関の必要性)今日の対話や論争における説得力の根拠は「科学的な論理」である。わが国には,国際的にみて高い水準の海洋科学の分野がある。その実績を生かせば,わが国における海洋の学術全体を飛躍的に発展させることができる。その成果は,海洋の合理的な開発利用の基礎になると同時に,わが国の国際的発言力の根拠ともなる。それを実現するためには,異なる学問領域に分散されている海洋の学術および異なる省庁へと分断されている海洋行政の統一を図る必要があり,その行動指針となる包括的海洋政策が必要である。国家にとって海の存在が重要だと考える国は多い。わが国と北太平洋を共有する諸国では,特別な審議機関を設けて海洋基本法を制定し,包括的な海洋政策を策定している。それに依拠して,海洋に関連する行政機構の整備再編,学術の振興,外交の展開等々を活発に実施している。わが国も,国家として海洋を重視する姿勢を,海洋基本法および包括的海洋政策として示すべきである。
- 日本海洋学会の論文
- 2006-03-05
著者
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