『井月の句集』をめぐって : 下島・芥川・瀧井・室生・島村らの関心
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概要
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幕末安政のころから明治二十年春まで、南信州伊那峡の村々を俳徊していた乞食に、井月と名のる漂泊の俳人があった。石川淳の『諸国畸人伝』(昭三二・一〇・二〇刊 筑摩書房) 中に語られるひとりである。家なく、妻子なく、出自も来歴も明らかにせず、無一物の風狂者は、後半生を村人たちの恩恵に養われ、泥酔のままに逝ってしまう。その死後三十年余りして、生前よみ捨て、書き捨てられていた俳句や筆墨が下島勲、富士の兄弟により発掘、収集され、『井月の句集』として刊行される。以来、高津才次郎・宮脇昌三らの研究家も現われ、改訂増補はほどこされ、復刻版も出ている。井月の生に対して、多くの愛好や関心は綿々とつづいて現在に及ぶ。先年物故した作家島村利正も同様である。島村の、発端部のみ示されて、永遠に未完となった「火山峠」は、井月伝を目したものといわれる。むしろ、井月とその句集編纂をめぐる人々を描こうとするらしい。「火山峠」構想を推定しながら、下島勲・芥川龍之介・滝井孝作・室生犀星・島村らの、井月に寄せた熱い関心を洗い上げてみたい。一、島村利正と「火山峠」構想 二、三種の井上井月句集 三、室生犀星・滝井孝作の関心 四、芥川龍之介の井月作品化 五、下島勲の『井月の句集』編纂
- 1984-03-15
著者
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