植物および菌類の空間利用を中心とした液胞の機能1 : 液胞機能の一覧表
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概要
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空間利用の立場から, 液胞機能の一覧表を作成した。 分子生物学的な, ミクロの分野は削除した。 液胞の機能には, 他の細胞器官に較べて, 性格の異なる部分が多い。 液胞は巨大な体積を占める, 多機能の細胞器官である。 一覧表のごとく, 極めて多くの機能を果たす。 その用語や表現は, 収拾がつかないほどに多様化している。 そのため分類基準の決めかねるものもある。 液胞の拡大で, 外界との物質・光の交換面が増大される。 その際, 表面積/体積 (率) の低下が同時に起こるが, 液胞の機能によって, その不備も補償される。 液胞は静的な機能体であるが, 輸送にも多くの機能を果たしている。 液胞の拡張で形成された死細胞の細胞壁も, 生体内で重要な機能を果たしている。 液胞で拡張された細胞壁の構造は, 生物マスを支え, 腐植を形成する。 細胞内の萎縮・消失構造を, 液胞が穴埋めすることによって, 直ちに膨圧が細胞質と細胞壁に働き, 細胞質が細胞壁へ密着することと, 細胞壁の補強が保証される。 老廃物再利用のための二次リソソーム機能は, 希薄な栄養環境での生存に有益である。 液胞は多種類の物質を蓄積し, 浸透圧の形成に役立つと共に, それぞれの化合物が示す, 独自の機能を支えている。 この一覧表の, 液胞内の蓄積物質の分類は, 再考慮の余地を含み, 今後の改善が望まれる。 脂質は疎水性の化合物であるため, 液胞内液中では, 相を異にする。 貯蔵脂質は, 液胞内の存在様式から, 液胞としての範疇設定に問題を抱えている。 分泌物を蓄積する液胞には, 液胞とすべきか否かの判定に困難な例が少なくない。 生体防御物質の種類は多様で, 分類基準の決め方の困難なものが多い。 液胞に類似した構造体のうち, 細胞器官内の液胞と, 動物の液胞を表に加えた。 半透過性は, 液胞のほぼ全機能の基礎になっており, 適当な配属法が考えられなかった。 細胞壁形成の前後で, 液胞の形態変動の意義の変わること, ならびに空間の先行的な獲得・備蓄の状況などは, 次報で詳述する。
- 中京大学の論文
- 1992-05-28
著者
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