ヨーロッパのデモクラシー : 欧州統合の政治哲学的考察(<特集>ヨーロッパ統合研究への新たな視座)
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概要
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現在,欧州統合の加速にもかかわらず,それをいかに理解するべきかについては,議論の一致を見ない.欧州統合を政治哲学的な見地から捉えようとする本稿は,三つの角度から問題にアプローチする.まずヨーロッパの歴史的個性が重要である.ヨーロッパは元々一つの世界として成立し,その後主権国家の均衡システムとして発展した.現在の欧州統合は,この歴史のベクトルを逆向きにするものであるが,一政治体としての欧州は,ヨーロッパ史にとって初めての経験である.次に欧州統合を,共産主義,社会民主主義,国民国家の《終焉》という,世界の三つの一般的動向との関連で捉えることができる.そこで問われているのは,政治的《近代》・国家の統治能力・主権国家体系が動揺を見せつつある中での,新しい秩序形成の理念である.最後に欧州統合は多元的な民主主義の実験室である.言語や文化の壁を越えた,国家横断的で多元的な民主主義は可能なのか,新しい公共性が模索されている.欧州統合は,多くの問いを生み出しつつあるが,解答の試みは始まったばかりである.
- 2003-01-30
著者
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