『三国志演義』に見られる近称指示詞"此"の機能
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概要
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古代漢語の近称指示詞は,話し手と空間的または時間的距離が短い範囲内の存在物を指示する機能が重視され,全ての近称指示詞が同じ使用条件を含む語彙として認識されがちであるが,文中に於ける使用状況を改めて確認すれば,選択根拠には異なる部分も指摘される。明代に著された白話小説『三国志演義』(羅貫中作)の"此"は,時間帯や地域の指示では話し手と聞き手の領域共有が使用条件に挙げられ,それは著者や話し手と対象との位置的または心理関係の表現に効果を発揮している。また,同じ近称指示詞である"是"より程度の高い強調機能を含む点も特徴に挙げられ,対立関係の表現では遠称指示詞"彼"との併用"彼此"が用いられている。他語彙との併用では"在""於"との併用による存在の表現,また"従""離"との併用による移動線上の「起点」,"過""越"とによる「通過点」,"到""至"とによる「終点」の表現も見られる。
- 2004-09-30