戦後日本のダム開発とナショナリズム : ナショナリゼーション論にもとづく分析(現代的ネットワークにもとづく流域社会の再構築の可能性 : 京都府美山町を事例として,I共同研究)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本稿は,戦前・戦後日本におけるダム建設に対する反対運動の変化を「ナショナリゼーション」とナショナリズムの観点から説明することを目的とする。天然資源の乏しい日本において,戦前の経済発展は水力発電に大きく依存し,河川を利用した電源開発が盛んに行われた。しかし,それらは山村社会を犠牲にするものであり,激しい反対運動が展開された。そして,戦前におけるダム建設計画は河川が山村に対してもつ多様な重要性ゆえに時には中止を余儀なくされたこともあった。ところが,戦後ダムの規模が大きくなり山村に与えるその影響も拡大し,強い反対運動が展開されたにもかかわらず,さらに数多くのダムが建設され,その数は2700にも上っている。こうした過程を説明する概念として本稿ではナショナリゼーションとナショナリズムを重視する。ナショナリゼーションとは,国内地域分業を伴う商品と資本の流通やヒトの移動の全国規模化の過程を指す概念である。本稿では,山村における林業の盛衰史を概観し,戦中の総力戦体制による徹底したナショナリゼーションの過程が山村や河川の経済的役割と人々の態度を変化させ,さらには戦後に生まれた経済成長ナショナリズムといった新しいナショナリズムが反対運動をイデオロギー的に抑圧することによってダム建設を促進したことを論じた。
- 龍谷大学の論文
- 2005-03-25
著者
関連論文
- ボランティア団体のニーズと大学生の意識との間の乖離
- 地方分権時代における市民活動と大学の連携
- 戦後日本のダム開発とナショナリズム : ナショナリゼーション論にもとづく分析(現代的ネットワークにもとづく流域社会の再構築の可能性 : 京都府美山町を事例として,I共同研究)
- 2003龍谷大学 国際社会文化研究所シンポジウム : 日本のアジア報道・アジアの日本報道
- 流域社会への視座 : ナショナライゼーション論とリスク論を中心として
- 現代的ネットワークにもとづく流域社会の再構築の可能性 : 京都府美山町を事例として
- はじめに--環境のメディア化を考える (特集 環境メディアの誕生と社会)
- ポストモダンの両義性と環境社会学--ラウンドテーブル「環境社会学と社会学理論」を振り返って (ラウンドテーブル報告 環境社会学と社会学理論--対話の試み)
- 媒介者たちの社会学はどこへ?--フィールドとしての社会学 (特集 現代社会の危機と社会学の役割)
- 河川の環境社会学へ(Doing Sociology)
- 古都税問題の宗教・政治社会学 (宗教の社会学)
- 古都税問題へのアプロ-チ--パ-スペクティブのtriangulation
- 婦人一時保護施設の機能--スタッフと入所者との問題認識をめぐって (婦人一時保護施設入所者の経歴分析)
- マルクスの「人格化」概念の考察--物象化論の忘れられた側面
- 二つの長良川河口堰建設反対運動--産業間対立からポストモダンの自然環境保護運動へ (特集 川にかかわる--日本各地の事例から)
- 市町村合併のイベント・ヒストリー分析
- 地方自治体の財政行動と都市システム
- 地方財政の社会学的分析へ向けて : 蓮見・似田貝「行財政の社会課程分析」の方法論的検討
- 地域構造変動と組織リ-ダ-の型
- 農業水利開発の社会学的考察 : 愛知川沿岸土地改良区の事例をめぐって
- 「他者」の論理構造 : 物象化論と役割論の対話をめざして
- 「他者」の論理構造--物象化論と役割論の対話をめざして
- 祭りのオーソプラクシー化と社会変動 : 曳山祭を事例として
- 祭りのオーソプラクシー化と社会変動 : 曳山祭を事例として (「新たな観光」の可能性と地域社会)
- 河川環境事業としての「多自然型川づくり」 : 1970年代以降における建設省・河川環境行政史(コモンズとしての森・川・海)
- 小特集 流域の環境保全(特集・小特集のことば)
- 河川の環境社会学・試論(1)
- 媒介者たちの社会学はどこへ? : フィールドとしての社会学(現代社会の危機と社会学の役割)
- はじめに : 環境のメディア化を考える(環境メデイアの誕生と社会)