病気対処としての「語り」 : 1992年,乳幼児「アトピー」への母親の対処行動を考えるために
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概要
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本論は,医療化社会における病気対処を考えるうえでの「語り」の重要性を示した論考である。もとづく資料は1992年,A病院のアトピー性皮膚炎の子どもをもつ親の会参加者と元参加者19名に実施したインタビューである。対象者のなかから,医師の指導のもとアレルゲンを摂取しないよう食事制限をおこなった除去食事例と除去食のあと民間療法に転換した民間療法転換事例,いずれの治療でも効果が出なかった効果なし事例をとりだし,母親の「語り」を比較した。その結果,除去食事例では湿疹と食物との関係に気づく「発見」の語りが,民間療法転換事例ではそれまでの除去食を苦難としてとらえ,そこからの脱出を語る「苦難からの脱出」と「病気の実体化」が,効果なし事例では「諦観」の語りが,主要なストーリー(MS)として見いだされた。病気対処は病気経験を組織化する特有の「語り」を構成する。ある療法が病気や家族に受け入れられるかは療法自体の効果とともに,そのような語り口の共有可能性によると示唆された。まとめとして,病者の語りに寄り添うとりくみが専門家と病者との橋渡しを可能にすると提言した。
著者
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