薩南海域におけるイセエビ類の分布と黒潮の影響 : イセエビの棲み分けに及ぼす黒潮の効果に関する一考察
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概要
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1)薩南海域に棲息するイセエビには,大別して2系統が考えられる。即ち,九州西方群と南方系統群である。2)九州西方からの補給群はイセエビ(P. japonicus)の本邦固有種であるが,この海域の詳細が不明であるので,補給源は判別し難い。3)南方群のイセエビは5種が考えられるが,世界の低緯度に分布するシマイセエビ,はるか南方に主産地をもつイセエビ群などがあり,これらの補給源も確認し難い。4)黒潮の分派と沿岸水が混在する黒潮本流の北側の海域では,本邦主要種6種が棲息し,特性のある沿岸にそれぞれ棲み分けて棲息している。5)黒潮に洗われる沿岸は,屹立する岩礁,洞穴,リーフ,石塊など,またその間に存在する砂浜等が好適な棲息条件となる。これらの深く落ち込む水深層を水際線,岩礁の斜面,洞穴,リーフ,砂浜と異なったイセエビの種毎に棲み分け,小さい島や限られた水域を有効に利用している。6)狭いこの薩南海域は中央を黒潮本流が流れ,北に黒潮混在域,本土沿岸域,南側には黒潮反流域が存在し,模型的なイセエビの棲息区域を形成している。7)この薩南海域のうち黒潮混在区域は本邦固有種のイセエビの直接補給源に当たり,黒潮を介して本土太平洋沿岸への補給のための重要な種苗生産場を形成していると考えられる。8)行政的には本来成育,生態も異なる南方系のイセエビが沖縄,小笠原及び本海域に生産され,生産量は全部で100トン近くあるが,現在イセエビ単一種として取扱っている。南方系イセエビの補給源もイセエビ(P.japonicus)と併せ詳細にする必要があろう。
- 鹿児島大学の論文
- 1995-12-25
著者
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