所有論の基本的視座 : 所有とは領有(=取得)の過程における社会的関係である (経済学部50周年記念号)
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概要
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本稿は「私的所有権の存立構造」(『経済学研究』第53巻第1号、2003年6月)の続編をなすものであり、筆者の所有論の体系的展開の一部をなすものである。マルクスはその所有論についての自己の見解を明示的に述べたのは『経済学批判要綱』においてであり、そこに所有論についての考え方が明白にあらわれている。自然生的共同態における個人が所与としての自然に対して自分のものとして関わる単純な領有=取得の関係においては、所有は発生しない。諸個人の共同態に対する自然生的関係が変化し、自然的前提を社会関係に包摂するときし、諸個人は自然的条件を自己の財産として眺めるようになる。すなわち領有過程において人々が社会関係に媒介され、それに包摂され、従属するようになったときに所有が発生する。共同体に対する個人の関係という社会関係が諸個人を包摂し、その諸個人の自然に対する関係を包摂するときに所有が発生する。所有論の解明は自然に対する諸個人の関係すなわち領有=取得を媒介する包摂的社会関係が焦点となる。したがって所有論の解明は包摂的主体の概念を明確にすることが決定的に重要となる。この包摂的主体の概念はなによりも自然と人間との関係を媒介する第三者としての労働において現れる。関係を媒介する第三者の自立化マルクスの所有論はこの視点に貫かれている。
- 北海道大学の論文
- 2003-12-16
著者
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