層流境界層に於ける許容粗度に就いて
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概要
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物體表面の些細な粗さが著しい抵抗増加を與へるのは,粗粒自身の直接の抵抗に因る許りでなく,粗粒が境界層の遷移を誘發して,亂流境界層の範圍を増大する事にも因るのである.粗粒の直接抵抗に就いては,既に二三の實驗結果が知られてゐるが,遷移を誘發せぬための許容粗粒に關する知識は,殆ど臆測の範圍を出て居らぬ樣に思はれる.シルレルによれば,粗粒の高さkと,粗粒の頂點での速度u_kとに關するレイノルヅ數が或る臨界値に達するときに,局部的剥離が起つて,遷移が誘發される.u_kの代りに,表面摩擦應力τ_0に相當する速度[numerical formula]を用ひて,レイノルヅ數[numerical formula]を作ると,この數が或る臨界値Kに達するときに,遷移が誘發される事になる.併しKの數値に就いては,單なる想像以外に全く據るところがないので,筆者等は平板並びに對稱翼型に就いて風洞實驗を行ひ,夫々K=13並びに15なる結果を得た.但し粗さは,表面に密着させた直徑kの針金によつて表現した.Kの値の不一致に就いては明かでないが,針金は對稱翼型の場合にはその前縁近くに置いたので,壓力降下のために,流れの安定が幾分高められたのではないかと思はれる.この點に關しては,將來の研究に俟たねばならぬけれども,實用上の目的に對しては,安全のためにK=13と採ればよいであらう.然らば許容粗粒の高さkは[numerical formula]によつて與へられ,Vは一樣な流れの速度,tは物體の基準の長さ,例へば翼弦長,[numerical formula]は物體の形状並びに粗粒の位置に關係する.粗粒が壓力降下領域に存在する場合には,ポールハウゼンの解法,或はその他の方法によつて,比較的容易にAを計算する事が出來る.
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