立地優位性の高度化 : 国際海運業における外国人船員の活用を中心に
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本稿は、国際海運業における外国人船員の活用に焦点を当て、海運企業による船員の調達および育成の立地選択に影響を及ぼす立地優位性と、その高度化プロセスについて、主に海運企業のケース・スタディーによって検討することを目的とする。現在、わが国の海運企業が雇用する船員のうち、最大の割合を占めるのがフィリピン人船員である。国際海運業は、機動性の高い事業活動を展開するため、船員の調達および育成の立地選択に関しても、特定の立地に拘束される要因は、それほど重要でないとも考えられる。しかしながら、日本の船舶に配来されるフィリピン入船員が、全体の過半を占めているという事実は、船員の調達および育成に関して、フィリピンに固有の立地拘束的な優位性が存在することを示唆している。また、これまでの研究では、立地優位性要素がどのように企業の競争力に転換されるかというプロセスに焦点を当てられることが希少であり、この点について検討を加える必要があると言える。本稿では、このような問題意識に基づいて、フィリピンにおいて外国人船員を活用する海運企業や、船員教育ないし船員関連政策を行う政府機関に対してインタビュー調査を行い、その調査結果から、フィリピンが船員輩出国としてもつ立地優位性と、その高度化プロセスを検討した。その結果、フィリピンには船員輩出国としてもつ立地拘束的な優位性が存在し、それらの要素がフィリピンに固有の諸要因によって形成されている点が明らかになった。フィリピンがもつ立地優位性は、インフラ要因、環境要因、競争要因の3つの観点から説明することが可能である。それと同時に、立地優位性要素を高度化するプロセスが、単に個々の企業の人的資源管理という枠組にとどまらず、政府機関や教育機関、労働組合組織とのコラボレーションによって構築され、それぞれが異なる役割を分担することによって促進されている点が認められた。
- 2005-09-30
著者
関連論文
- 外航海運業の船員戦略における知識移転
- 外航海運業における人的資源管理と船員市場の内部化
- クルーズ客船事業におけるサービス・マネジメントと船員戦略
- 外航海運業の安全管理とクロスボーダー・コミュニケーション : 異文化マネジメント論の観点から
- 国際ビジネス論から見た船員戦略とマンニング(船舶管理の動向)
- 立地優位性の高度化 : 国際海運業における外国人船員の活用を中心に
- 外国人非正規従業員のリテンション・マネジメント : 外航海運業の観点から