グローバル小売企業の理論構築に向けて : 小売企業のグローバル・パスに関する考察
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概要
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従来から小売企業は典型的なドメスティック産業に属し、海外で店舗を構えて経営することは非常に困難であると考えられてきた。仮に海外出店した場合でも当初は言語、文化、習慣等が母国と比較的類似した国への進出であった。しかしながら、90年代後半から欧米を代表する大規模小売企業が言語、文化、習慣等を異にするアジア諸国に進出し、そこでは地場企業、外資企業入り乱れての熾烈な競争が展開されるようになった。こうした背景には、近年、先進各国の国内小売市場が飽和状態になり、一層熾烈な競争が展開され、加えて大規模小売店に対する出店規制は強化されているといったプッシュ要因と、併せて受入先国での人口急増や高度経済成長、小売市場の未成熟化、外資規制の緩和、インフラ整備の進展、アジア通貨危機での市場機会の創出といったプル要因によるところが大きい。本稿では、母国だけでなくアジア諸国や他の多くの国々にも進出して店舗を構える小売企業を「グローバル小売企業」と称し、純粋な国内小売企業からグローバル小売企業に成長するまでの道筋であるグローバル・パスをいかにすれば効果的に構築できるかを検討することを目的とする。小売企業のグローバル化には商品品揃えの標準化の達成がポイントである。各国市場での商品の適応化と同時にいかに標準化を図るかが重要課題である。小売業では標準化すると、異質な現地市場への適応力は著しく低下することになる。この「グローバル・ジレンマ」をいかに克服するかが問題である。純粋な国内小売企業がいかにしてグローバル小売企業に辿り着くかの方途は、向山(1995)により、商品調達行動のグローバル化度と出店行動のグローバル化度の2軸によってモデルが提示されたが、それは自前開発型(または自社調達型)グロパル・パスであった。本稿では、これを越えてアライアンス型およびM&A型を重点的に提示し、特に日系小売企業が見習うべきモデルとしてテスコの国際展開におけるM&Aを検討する。アジアの戦場においてはM&A型グローバル・パスの実践こそが最も有力なサバイバル戦略であると確信するものである。
- 2005-09-30
著者
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