天保10年京都豊年踊りの絵画資料
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概要
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京都豊年踊りとは、天保10年(1839)3、4月京都市中におこった熱狂的な踊り現象をさす。本稿では、この豊年踊りの絵画資料を概括し、その伝播過程や絵画の共通性や特異性を検討する。まず木版刷りの史料を検討した。京都で発行された一枚刷り「豊熟都大踊」「みやこおどり 鈴なるこの神徳」(大阪府立中之島図書館)や木版本『町々吉兆都繁栄』(早稲田大学附属図書館)は、この踊りの情報を各地へ伝える役割をはたした。たとえば後者は、『天保雑記』(国立公文書館内閣文庫)や『藤岡屋日記』(東京都公文書館)にそのまま書写されている。次に図巻・屏風の資料を検討した。図巻としては、「蝶々踊図巻」(大阪歴史博物館)と「天保十年豊年踊図巻」(チェスター・ビーティ・ライブラリー、アイルランド共和国ダブリン市)が双璧をなす。また「天保踊図屏風」(京都市歴史資料館)について、写真をかかげ、関連史料と合わせて紹介した。最後に冊子のさし絵を検討した。なかでも「天保視聴記事」(愛知県西尾市立図書館岩瀬文庫)のさし絵は図巻に匹敵し、『天保踊之記』(愛知県大洲市立図書館矢野玄道文庫)は、踊りに使われた衣装や提灯・手燭を図入りで説明している。これらの資料は、文字資料(文書・記録)とあわせて、豊年踊りの実状を詳細に明らかにするであろう。
- 2006-03-08