インフルエンザにならないために,もし罹ってしまったら : 日常生活の注意点,予防法・治療(<特集>都民公開講座 かぜとインフルエンザ)
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概要
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インフルエンザの流行は12月から3月であり,主に飛沫感染により人から人に感染するため,インフルエンザの流行時期には,繁華街などの人が大勢集まる場所へは行かないようにする.また,マスクを着用し,手洗い・うがいの励行は,ウイルスを体内に入れないということで重要である.インフルエンザワクチンを接種することでウイルスに対する抵抗力をつけることができ発症の抑制や重症化防止が期待できる.その効果が出現するまでに2週間程度かかり,5ヵ月間持続するため12月上旬までに予防接種を行っていた方がよい.予防接種は,一般の医療機関で受けることができるが,健康保険が適用されないので費用は全額自己負担である.ただし,65歳以上の高齢者と60〜64歳の心臓・腎臓・呼吸器等に基礎疾患のある人は,予防接種法により公費の補助が出ることがある.インフルエンザに罹ってしまったら,適切な栄養補給・安静が必要である.近年,インフルエンザに対する薬剤が3つ認められており,塩酸アマンタジンはA型インフルエンザにのみ有効であり,ザナミビル・リン酸オセルタミビルはA型・B型のいずれにも有効である.これらの薬は,発症してから48時間以内に服用することにより,症状の緩和や発熱期間の短縮が期待できる.発熱に対しては,小児では解熱剤にジクロフェナクナトリウム(ボルタレン)やメフェナム酸(ポンタール)を使用した症例にインフルエンザ脳炎・脳症を来しやすいことが知られており,解熱剤としてアセトアミノフェンの使用が推奨されている.15歳以上の人では解熱剤の使用に制約はないが,脳炎・脳症を合併した際には小児と同様に考えるべきである.インフルエンザを他の人にうつさないためには,発症してから3〜5日はウイルスを排出するので,人の多く集まる所に行くことは避けた方がよい.学校保健法では,「解熱した後2日間を経過するまでをインフルエンザによる出席停止期間」としている.また,マスクの着用や手洗いが有効である.インフルエンザの施設内感染予防を行うために,事前対策としては,施設内に感染対策委員を設けて施設内のリスク・流行状況の把握・職員教育を行う.施設内感染対策の指針を作成しておく.すなわち,インフルエンザを疑う症状や施設内における対応方法および関連医療機関との連携を文章で作成し周知徹底させる.また,インフルエンザウイルスを施設内に入れないために感染患者(インフルエンザの症状のある人)を施設内に入れないようにする.やむなく施設に入る際にはマスクの着用や手洗いを励行させる.また,施設内で働く人に対して予防接種をしておく.実際にインフルエンザが施設内で発症した際の行動計画としては,感染の拡大を阻止するために,患者に個室を提供し,施設内に医師がいない場合には外部から援助を受ける.また,多くの人が集まる集会所やレクリエーション施設などの使用を一時停止する.最後に,施設内感染対策の総合評価を行わなくてはいけない.具体的には,施設内のインフルエンザ患者数の把握や,代表的な症例を通して,発病・診断・治療・経過の調査と分析を行い,高齢者・基礎疾患を有する人・小児など危険性の高い症例についての解析を行う.
- 2004-06-30
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