<国立科博専報>富山県黒瀬谷層(中部中新統)に見出されるマングローブ林の様相
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概要
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富山市の南方に分布する黒瀬谷層(中部中新統)に関して, 花粉分析を主体とした研究を行った。その結果, 次の諸点が明らかになった。 1. 黒瀬谷層の花粉組成は暖温な古気温を示すものであり, 東北日本の新第三系の花粉層序のうち, NP-2 帯(15〜16 Ma 前)に属するものである。 2. 黒瀬谷層の下位の層準からはマングローブ植物の花粉が多産するが, とくに栃津川流域や神通川流域の春日からは Excoecaria や Sonneratia の花粉が高率に産する。 3. 当時の栃津川流域や春日付近は黒瀬谷期に存在していた古神通川(津田, 1955)の河口のデルタをはさんで, その両側の海浜付近に位置していたものと考えられる。このような場所はマングローブ沼が形成されるには好適であった。 4. 黒瀬谷層から産出するマングローブ植物花粉の組成は現在のマングローブ林と比較すると, 少なくとも西表島以南のものに対応する。これは黒瀬谷層の貝化石群集の組成とも調和する。 5. 古神通川の河口付近に存在していたであろうマングローブ沼には, そこの海側から陸側へかけて, Sonneratia, Avicennia(砂泥質部)/Rhizophora(泥質部)→Bruguiera(ときに Ceriops, Scypihora, Nypa を交する)→Excoecaria と一連の群落ガマングローブ林を構成していたと推定される。
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