東北地方の短翅ハネカクシ類
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概要
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1982年の晩夏および1983年の初秋の二度にわたって, 筆者は国立科学博物館が主宰した東北脊梁山脈の自然史科学的総合研究の調査隊に参加して, 主として同地域の短翅ハネカクシ類の分布調査を行うことができた。その折に採集することのできたハネカクシ類および筆者が保有していた同地域産ハネカクシ類の中から下記の4新種を見出したので, それらを命名記載した。 1. Dianous gongen Y. WATANABE, sp.nov. ホソヒョウタンメダカハネカクシ 本種は蔵王山地, 後鳥帽子岳の渓流際から採集された個体に基づいて記載した。体長は4mm 内外, 体はやや円筒形で黒色を呈し, 暗青色の光沢を持ち, 四国から記載された D. japonicus に類似している。しかし雄交尾器の中葉が幅広く, 中央両側が平行している点で区別することができる。 2. Dianous iwakisanus Y. WATANABE, sp. nov. ツガルヒョウタンメダカハネカクシ 本種は青森県岩木山から採集された個体に基づいて記載した, 体長4.5mm 内外, 体はやや円筒形で, 全体黒色を呈する。暗銅色の光沢を持っている点で, 長野県ハツ岳から記載された D. shibatai に類似しているが, 体がより細く小形で, 雄交尾器の中葉が末端に向かって急激に細まる点で区別することができる。 3. Lathrobium susumui Y. WATANABE, sp. nov. オバココバネナガハネカクシ 本種は山形県朝日鉱泉附近, 三方倉山および飯豊山麓の温身平周辺の落葉下から採集された個体に基づいて記載した。体長8mm 内外で, 体は両側が平行し, 上面はやや平圧される。黒〜黒褐色で, 触角末端2節は黄橙色, 腹部末端2節と脚は黄褐色を呈する。翅鞘が短く, 後翅が退化し, 雄の腹部末端に顕著な第二次性徴が認められる点で, L. monticola に類似している。しかし雄の第二次性徴の構造および交尾器の形態が異なる点で容易に区別できる。なお, 種名は今回の調査に際して種々ご協力戴いた山形県在住の加藤進君に献名したものである。 4. Ocypus (Protocypus) septentrionalis Y. WATANABE, sp. nov. キタサビイロモンキハネカクシ 本種は前種とともに飯豊山麓の温身平の落葉下および同山麓の湯ノ平から採集された個体に基づいて記載した。体長17〜21.2mm の大型種で, 光沢はなく, 鈍い黒色を呈し, 触角基方7節と腿節は赤褐色, 触角末端4節と脛節, 腿節は黄橙色, 第6および第7腹節の背板中央には大きな円い金色毛斑を具えている。体長および外部形態は日光から記載された O. dorsalis と酷似しているが, 雄交尾器中葉の形が異なり, 特に末端が細まらない点で容易に区別できる。 また, 従来東北地方から記録されていた Dianous 属の2種と, 今回新種として記載した2種を含めた4種の分布について言及した。これら Dianous 属の4種は, いずれも後翅が短く退化しているため飛翔活動は不可能である。そこでこれらの種の分布に関心を持っていたが, 今回の調査によって体に暗青色光沢を持つ D. japonicus 種群は東北地方の中央を走る奥羽山脈に分布し, それに対して体に暗銅色光沢を持つ D. shibatai 種群は出羽丘陵等の日本海側に走る山地帯に分布していることが判明した。
- 国立科学博物館の論文
- 1984-12-01
著者
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