在米日系企業における従業員のIT行動と職務満足度への影響
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概要
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今日,日本企業のグローバル化の進展に伴い,日本人と外国人が同じ職場で働く機会が飛躍的に増大している。特に,海外の日系企業において,外国人を部下に持つ日本人マネジャーが増加していることから,異文化間ヒューマン・リソース・マネジメントヘの関心が高まっている。一方,これまでの日系企業に関する研究では,日系企業で働くホワイトカラーを中心とした現地従業員の職務満足度は低く,高い転職傾向を持つことが指摘されている。その原因として,ホワイトカラーの仕事はブルーカラーの仕事に比べて,職場の対人関係が仕事の成果に影響する度合いが強く,その成果が従業員の職務満足度に反映することが考えられる。したがって,日本人マネジャーは,これまで以上に米国人従業員との良好な対人関係を築いていくことが求められよう。本研究では,最近,米国の組織行動理論の分野において,対人関係を分析する新たな手法として注目を浴びているIT(Influence Tactics)行動モデルを用いて,日系企業における上司-部下関係が部下の職務満足度に与える影響について実証的な分析を行なった。分析サンプルとして,在米日系企業で働く米国人上司-米国人のペア177組と,日本人上司-米国人部下のペア61組を用い,部下の職務満足度を比較するとともに,部下のIT行動を含め対人関係に関連した復数の要因が,部下の職務満足度に与える影響を調べるために階層的重回帰分析を行った。分析の結果,日本人上司の部下は米国人上司の部下に比べて,職務満足度および上司満足度が統計的に有意に低いことが明らかになった。また,階層的重回帰分析の結果,部下のIT行動の結果として与えられる報酬が説明変数中もっとも強く,部下の満足度を決定していることが明らかになった。したがって,IT行動モデルを上司と部下の対人関係の分析に用いることの有効性が確かめられた。
- 慶應義塾大学の論文
- 1993-06-25