オートメーションと技能 : 日本の生産労働者と一般事務員について
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概要
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オートメーションに伴い,労働者に求められる技能はどうなるのか。このテーマに挑んだ数しれない研究のなかでも,H.ブレイヴァマンによる『労働と独占資本』(Labor and Monopoly Capital, 1974)は,今日においても広く熱心な議論を呼び起こしている代表的な研究の1つである。本論では,職場で生じている"不確実性や変動性"に注目し,かつそれを"仕事の仕方に変化をもたらす要因"として現場レヴェルにまでおりて具体化することにより,日本の生産労働者と一般事務員に求められる技能が,オートメーションに伴いどうなったのかに関して,ブレイヴァマンが示した理論をたたき台として検討を行った。その結果,日本の生産労働者と一般事務員に関して,オートメーションに伴う技能変化に,1つの基本的方向性の一致を見いだす可能性が示された。その方向性とは,同じことを繰り返し行うための技能から,そうした仕事の仕方に変化をもたらす要因に対応するための多能的技能への技能の質的変化を少なくとも意味しており,ブレイヴァマンの理論が示すような,両階層における技能が,ともに低下し同質化するというものではなかった。そしてこうした方向性は,日本企業が,市場ニーズ志向的,それも多様化・流動化した市場ニーズを志向する生産活動を展開するうえで,技能変化の方向性を規定する次のような経営戦略を重視する傾向があることによって説明された。それは,オートメーションに伴い人手に残され顕在化する,仕事の仕方に変化をもたらす要因に効率的に対応するために,作業組織のフレキシビリティを高めることである。日本企業においては,対内的生産志向の生産活動を前提としたブレイヴァマンの理論におけるように,労働者統制の強化と賃金の引き下げの2つが最重視されるとは,必ずしも言えないのである。
- 慶應義塾大学の論文
- 1994-08-25
著者
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