日本企業における作業組織のフレキシビリティ : 技能形成に内包された組織文化的価値の学習に注目して
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概要
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日本企業,なかでも生産現場の作業組織のフレキシビリティが注目されている。日本の作業組織では,とりわけ不確実性や変動性への対応における柔軟性を確保するために,成員の職務行動に一定の自律性が付与されているのであるが,そうした自律的な職務行動をいかに円滑な分業による協業に統合するのかというコントロールの問題が,フレキシブルな組織にとっての枢要な問題となる。この問題に関して,本論での理論的検討から次のようなことが結論された。日本的雇用慣行下の作業組織では,どのような方法でどのような成果をあげることが望ましいとされるのかに係わる組織に固有の文化的価値の学習が,実践による技能形成すなわちOJTのなかで効果的になされている。そのため,そうした組織文化的価値が,成員の技能のなかに深く埋め込まれることになる。その結果,不確実性や変動性への対応における場面場面に応じた技能の使用は,そうした組織文化的価値に基づく指針にしたがって融通無礎に行われることにより,コントロールの問題が解決していると考えられる。このように,組織のフレキシビリティにとって枢要なコントロールの問題が解決されるうえで,日本の作業組織では,技能形成に内包された組織文化的価値の学習が重要な役割を果たしていると考えられる。その意味で,日本の作業組織のフレキシビリティは,技能形成に内包された組織文化的価値の学習に支えられたものであるといえる。
- 1995-10-25
著者
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