顎二腹筋の前腹の過剰筋束に関する一考察

概要

論文の詳細を見る
顔面頭蓋において,咀嚼筋と下顎骨の関係を中心に機能的な解明がなされてきたが,開口筋である舌骨上筋を主体に検討したものは殆ど見あたらない。そこで,演者らは顎二腹筋の前腹を主体とした下顎骨との力学的関係に主眼をおき,学生解剖実習遺体15体30側(男性7体,女性8体,平均年齢84歳)を用いて検討を行い,今回その概要について報告した。肉眼的観察は通法に従い顎二腹筋の前腹を剖出し,破格を有さない正常群と,破格である異常筋束を有する異常群に分類しデジタルノギス(mitsutoyo(R))にて,下顎骨の形態計測を行った。統計処理はStat View(R)にてt-検定(p<0.05)およびPeaesonの相関係数を求めた。正常群と過剰筋束群の相関係数で,顎二腹筋の前腹の形態と下顎骨の形態に順・逆の相関が認められ,この相関はいずれも筋長に対する下顎体および下顎枝の長さであった。このことは過剰筋束の存在によって,左右の筋力が異なるため,それを補償するために下顎体および下顎枝の長さに影響が認められたとも考えられた。また顎二腹筋の前腹と下顎骨の関係をテコに置き換えると,支点は変化せず,力点と作用点の関係が効率のよいII級テコである。このII級テコにおいては,力点と作用点の距離が短ければ強い力を必要とし,距離が長ければ弱い力で良いことが知られている。したがって顎二腹筋の前腹は弱い力で下顎骨の下制に関与することが考えられる。よって顎二腹筋が持つ弱い力が慢性的に作用し,顎顔面形態に影響を与える可能性が推測された。
福岡歯科大学学会の論文
2001-12-30

顎二腹筋の前腹の過剰筋束に関する一考察

スポンサーリンク

概要

著者

関連論文

スポンサーリンク