XIX型コラーゲンの発現と欠損マウスの解析
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
XIX型コラーゲンは私達及びMyersらのグループによって明らかになったFACIT(Fibril Associated Collagens with Interrupted Triple helices)に属するコラーゲン分子である。このα鎖は5つのCOL領域と6つのNC領域よりなり、アミノ酸はヒトでは1142個、マウスでは1136個である。予想される分子量は約11万である。最初、私達はこの分子をヒト横紋筋肉腫細胞RDより見い出した。さらにNorthern blot法で培養細胞について検索を行うとアストロサイトU251細胞に発現が認められた。次にRT-PCR法を用いて広くマウスにおける組織発現をみると、胎児組織では肝臓を除く多くの組織で遺伝子発現が見られた。一方、成熟マウスではこの発現パターンとは異なり、脳、眼球や睾丸組織に限局したパターンを呈した。さらに詳細に発現をみるためにマウスの組織を用いてin situハイブリダイゼーションを行った。XIX型コラーゲンはまず、胎児9.5日目の筋節(ミオトーム)の筋芽細胞に発現が見られ、11.5日目にはピークとなり、その後、筋芽細胞が融合し筋管構造をとり始める時期には急激に減少し18.5日目ではほとんどなくなってしまった。この発現はMyoDファミリーの発現パターンと類似しており、特に初期因子であるmyf-5と発現様式がほぼ一致した。その他の発現としては、胃-食道連結部の平滑筋の一部に胎児13.5日目から生後3週にかけて発現がみられた。また、非筋肉系としては脳組織に発現があり、生後、成長に従って強く見られるようになった。その発現は限局しており歯状回や海馬の特定の細胞のみにシグナルが見られた。私達はエクソン4を破壊したtargeting vectorを作製し、欠損マウスを作製した。ヘテロマウスでは正常マウスと比べて差が見られないが、ホモマウスでは生後より明らかに小さく、強い衰弱傾向を示し、2週齢までにほとんどが死んでしまった。この原因については食道下部の消化機能不全による衰弱死が想定された。ここの筋肉を用いて生理学的な筋収縮の実験を行ったところ、括約筋としての機能が不全であることがわかった。
著者
-
住吉 秀明
大分大学医学部生体分子構造機能制御講座
-
吉岡 秀克
大分大学医学部生体分子構造機能制御講座
-
吉岡 秀克
大分医大二生化
-
Ramirez Francesco
ニューヨーク マウントサイナイ医科大学
-
吉岡 秀克
大分医科大学生体分子構造機能制御
-
住吉 秀明
大分医科大学生体分子構造機能制御講座
関連論文
- 前立腺癌細胞のPSA promoter 活性における転写因子Sp1およびSp3の機能解析(第93回日本泌尿器科学会総会)
- 骨折治癒過程における線維形成マイナーコラーゲン(V型およびXI型)の局在と役割
- コラーゲンと臓器線維症
- 軟骨無形成症4症例の解析
- B23 多因子性複合体によるIII型コラーゲン遺伝子の転写調節(第36回日本結合組織学会学術大会)
- XIX型コラーゲンに関する最近の知見(コラーゲン研究)
- 軟骨に発現するコラーゲン遺伝子の選択的スプライシング(コラーゲン研究)
- XIX型コラーゲンの発現と欠損マウスの解析
- マウスα1(XI)鎖遺伝子における組織特異的に発現するエクソン
- D-11 Epiplakin (450-kDa Human Epidermal Autoantigen)の組織局在
- 特集「コラーゲンの研究が機能や発現調節の方向で新たな局面を迎えている」(コラーゲン研究)
- コラーゲンスーパーファミリー
- コラーゲンと臓器線維症
- フィブリル型コラーゲン遺伝子の転写調節機構
- マイナーフィブリル型コラーゲン分子の発現の多様性と機能