痙性片麻痺患者の歩行装具と神経生理学的調節機構の関係
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概要
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相反性Ia抑制のメカニズムの異常を引き起こしているものとして中枢神経系疾患があり, 顕著な例として脳卒中痙性片麻痺患者の歩行がある。原因として麻痺筋の痙性の増強や拮抗筋の筋疲労が考えられているが, 病態解明までに至っていない。早期リハビリテーションに向けて多様な理学療法アプローチが試みられ, 早期の段階から装具による歩行訓練が実施されている。この装具歩行に注目して, 理学療法の科学性を追求するうえで装具が歩行に及ぼす影響を神経調節機構における相反性Ia抑制から研究することを目的とし, 若干の知見を得たので報告する。平均年齢47.6歳で, 罹患期間37.6ヶ月の軽度の脳卒中痙性片麻痺患者5名とし, トレッドミル上を時速1km/hで15分間の裸足歩行と短下肢装具による歩行の2つの課題を試行した。相反性Ia抑制の測定方法はヒラメ筋H反射を活用し, 相反性反射結合の導出方法から, 試験刺激を基準に条件-試験刺激間隔0, 1, 2, 3msecのH反射の振幅比を求め, 相反性抑制効果とした。裸足歩行では, 実験課題終了直後より相反性Ia抑制が消失・減弱しており, 15分経過後もほぼ同様の結果であった。うち2名は, 歩行前に健常成人と同じく条件-試験刺激間隔2msecと3msecでH反射の抑制がみられたが, 歩行終了後より抑制効果が減弱した状態がみられた。装具歩行では, 実験課題終了直後より歩行前の相反性Ia抑制が促通された状態に比較してH反射の振幅は小さく, 15分経過後も同様に抑制効果が減弱した状態はみられなかった。理学療法アプローチとしての装具が脳卒中片麻痺患者の歩行における脊髄神経調節機構への制御の可能性と, 正常な歩行パターンを考慮した適切な装具処方の必要性が示唆されたものと考えられる。
- 2000-07-31
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