簡易角度計による関節位置覚検査の信頼性

概要

論文の詳細を見る
傾斜角度計SLANTRULEは, 工業分野等において主に水平をみるための水平器として頻繁に用いられる器具である。この器具を使用して3名の検者が静止物体(無生物)の傾斜角度と人体(生物)の膝関節角度を測定し, 各検者間の測定値の差異より傾斜角度計SLANTRULEによる測定値の信頼性を確認した。その上でこの角度計を使用して膝関節に既往のない若年健常成人40名の左膝関節を対象として, 3種類の設定角度における対側肢での模倣角度と同側肢での再現角度を測定し, 健常者における膝関節位置覚の誤差の範囲および両者の相関について検討した。結果, 傾斜角度計SLANTRULEによる3検者間の測定値に有意差は認められなかった。対側肢での模倣角度の誤差の範囲は8〜14度であり, 10度以上の誤差を示す者も多くみられた。同側肢での再現角度の誤差の範囲は4〜8度と対側肢での模倣角度の誤差の範囲と比較して小さかった。左膝での再現角度の誤差と右膝での模倣角度の誤差との間には正の相関がみられた。以上より, 傾斜角度計SLANTRULEによる測定値の信頼性は高く, 臨床現場において応用可能な器具であると思われた。健常者における膝関節位置覚は10度以上の誤差があっても異常とは言い難かった。関節位置覚の異常の有無は, 対側肢での模倣角度の誤差の範囲よりも同側肢での再現角度の誤差の範囲が小さいことを念頭に置き, まず同側肢での再現角度の誤差の程度を確認した上で, 対側肢での模倣角度の誤差の程度を測定する。そしてその値が被検者にとって大きいものであるか否かを判断し, 関節位置覚の評価を行う必要があると考えられた。
1998-05-31

簡易角度計による関節位置覚検査の信頼性

スポンサーリンク

概要

著者

関連論文

スポンサーリンク