新しい光合成反応阻害剤,α-アゾヒドロペルオキシド (AHPO)
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概要
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α-アゾヒドロペルオキシド (AHPO) は,ベンズアルデヒド-フェニルヒドラゾンのヒドロペルオキシド誘導体で (第1図),その化学反応性は中核の炭素原子に付いたアゾ基 (-N=N-φ)とヒドロペルオキシ基 (-OOH) により生じるが,-OOH基を-OH基に変えても光合成阻害作用が見られた。(第2図 B, -Δ- : AHOL) 10μMのAHPOは,光化学系Iと光化学系IIに依存した電子伝達反応 (光合成明反応によるH_2Oからフェリシアン化カリウムやNADP^+やメチルビオローゲン (O)_2への電子の流れ) を阻害した (第2,3図)。しかし,光化学系II粒子の酸素発生反応 (第2図 A, H_2O→PBQ) や,p-フェニレンジアミンで触媒される光化学系IIに特異的な葉緑体の酸素発生反応 (第3図 A) は阻害されにくいので,AHPO阻害部位はプラストキノンの酸化側であると推定された。一方,メーラー型光合成酸素消費反応 (第4図,DCPIPH_2→MV(O_2))や,チトクロム-f光酸化反応 (第5図),循環的光リン酸化反応など光化学系Iに特異的な反応も,AHPOで阻害されなかった。この結果,AHPOはプラストキノンまたはチトクロム-b_6/f複合体を阻害すると推定された。これはジブロモチモキノン (DBMIB) やトリフルラリンやダイアレート,また1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド (EDAC) も阻害する部位であるが,AHPOとこれら阻害剤の構造は異なっている。また,DBMIB阻害はジチオスレイトールの添加で除去されるが,AHPO阻害は除去できず,DBMIBと阻害機構が異なることが推定された。以上の結果から,AHPOは,新しい型の阻害剤として,チトクロム-b_6/f複合体の電子伝達機構の解明や,新規除草剤の開発に利用できる可能性を持つことが示唆された。
- 日本雑草学会の論文
- 1993-10-22
著者
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