水田雑草草種の2,4-Dに対する感受性ならびにそのエチレンとの関係

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インドネシアの労力が不足する開拓地で解決の急がれている2,4-Dによる水田雑草防除の研究の一環として,2,4-Dに対する雑草草種の感受性の差異と2,4-Dによって誘導,生成されるエチレンとの関係を明らかにするためにポット試験を東京において行なった。1.2,4-Dアミン(40g,80g/10a)による生育阻害(生存葉数,葉の緑色程度の減少)および形態異常はコナギ>キガシグサ,ヒメミソハギ>タマガヤツリ>ヒエの順,枯死までの日数はコナギ<キガシグサ,ヒメミソハギ<タマガヤツリの順序であったが,ヒエは数目して生育阻害が回復し枯死に至らなかった。2.茎葉から発生するエチレンの量を,(1)生物検定法:エチレン濃度の増加によるトマト稚苗子葉の上偏生長角度の増加を測定する方法(馬場,1977)および(2)ガスクロマトグラフィーによる方法を用いて測定した。2,4-Dによって誘導生成されるエチレンの発生量は(1),(2)のいずれの方法を用いた値でも,コナギ,キガシグサ,ヒメミソハギ>タマガヤツリ>ヒエ,イネ(IR36)で,広葉雑草(コナギ,キガシグサ,ヒメミソノ・ギ)がタマガヤツリ,ヒエにくらべて著しく多かった(第1,2表)。すなわち葉からのエチレン発生量は,広葉雑草では2,4-D施用後6時間で顕著に増加し,24時間後にはピークとなり,それ以後は漸減した。これに対しタマガヤツリではエチレンの発生の増加は僅少であった(第2表)。3.2,4-Dとエチレンの両者の生育阻害と形態異常に及ぼす影響の相互関係をしらべるために,標準,エチレン(100ppm),2,4-Dおよび2,4-D+エチレンの各区を設けて実験を行なった(第3表,第2図)。エチレンおよび2,4-Dによる生育阻害と葉の上偏生長角度および株の開張角度を処理前の値に対する%で表わした値では,生存葉数は標準くエチレン<2,4-D<2,4-D+エチレン,葉の緑色程度の減少はエチレン<標準<2,4-D<2,4-D+エチレン,葉の上偏生長角度および株の開張角度は標準くエチレン<2,4-D<2,4-D+エチレンであった。すなわちエチレンの単独処理による被害は少なかったのに対し,2,4-Dによる生育阻害と形態的異常(葉の上偏生長,株の開張,コナギ,キガシグサでは茎葉の響曲,下垂など)は,エチレンとの複合処理により増大し,2,4-D+エチレン区では2,4-D区より0.5〜1.0日早く枯死した(第2,3図)。したがって広葉雑草の2,4-Dによる生育阻害と形態被害が著しく大きいのは,一部化学的ストレスによるエチレンの生成によると推測される。
日本雑草学会の論文
1982-08-26

水田雑草草種の2,4-Dに対する感受性ならびにそのエチレンとの関係

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