地域計画における公共施設の設置計画に関する研究 : S. B. 現象についてその 1

概要

論文の詳細を見る
本報告では, S.B.現象に関し, その概念を実証事例(I)〜(IV)をもって説明した。しかし, 日常生活行動圏と関連し, 「地域比較により施設の立地状況とS.B.現象の関係」および「S.B.現象の心理的側面と建築計画的問題」さらには, 「地域計画における, S.B.現象を考慮したうえでの施設配置計画のあり方」等々に詳しく言及できていない。これらの課題は次の報告にしたいと思う。本報告では, いまだ不充分な実証であるが, S.B.現象の概念をかりて, 次の三点の建築計画的問題が指摘できたと考えている。第1に, 従来農山村で欠損していたと考えられる。文化・スポーツ, 娯楽, 社会教育等の施設が, その欠損の状況, およびその結果としての貧困性の実態の客観的科学的実証が困難であった。これに対し, S.B.現象という概念は, これらのいくつかの側面を客観的に指摘していると考える。建築の空間計画において, この種の判断が客観的に成り立ち得なかった空間は各種存在する。今後これらのことを考えていく場合に, 考慮しなければならない概念であると考えられること。第2に, 従来, 圏域段階に応じ施設機能を単純に1対1に対応配置する計画理論は存在した。(ヒエラルキー論)農山村にも1次圏, 2次圏, 3次圏, 4次圏の各段階は存在するが, S.B.現象からの計画理論は, これの狭域圏に, 各種の機能を内在させ, これをスプリングボードとして広域利用していくことだけを強調するものではない。各段階の圏域に対し, 単に施設機能を単純に対応し, これを配置計画することだけではない。この側面のみを強調すると, 多くの単一機能施設が膨大に必要となる。このことは受益範囲と人口との関係で利用率が問題となる。むしろ, 個々の施設機能は, この内部に複数の機能を包合しているものである。(あるいは計画段階で単一機能であっても, 利用段階ではほとんど複合機能が要求される。)その内部機能の1つ1つが, 他施設(他圏域, 他機能施設)の内部機能とそれぞれに有機的関連にあるということである。従って施設の配置および, 施設の内部機能の(規模, 設備の)決定は, これらのことを判断して計画決定してゆく必要があることである。そして狭域圏の施設ほど(従来なかった)複合機能の施設イメージが要求されるということである。第3に, 地域計画における施設状況調査において, その数量的把握に問題があることを指摘した。従来の方法では誤謬がでる危険性がある。今後, この種の調査規準を再考していく研究が必要であろう。また, 単に自治圏単位で施設の充足度を考えることも問題がある。例えば本報告で展開している日常生活行動圏の概念を配慮し考えていく必要もあるのではないかということである。しかし, S.B.現象の実証は, まだ不充分であると考える。次報において, さらに, 上記の課題と対応させながら, S.B.現象の実証を深めていきたい。特にS.B.現象で「施設がないと利用しない, したがって, そのその要求も起こらなくなる」(・・・・・・・・・・・・)といった。後半(点部)の問題, 心理と行動, これを生活圏の問題を深めて, 地域計画の施設設置計画理論を考えてみたい。
1983-04-30

地域計画における公共施設の設置計画に関する研究 : S. B. 現象についてその 1

スポンサーリンク

概要

著者

関連論文

スポンサーリンク