富山県一農家 (佐伯家) の明和年間の家作とその文書
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概要
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佐伯家は富山県西砺波郡福岡町蓑島にある。砺波平野の西北部にあたる。この平野の村落は散村として知られており, 佐伯家もそのひとつの典型をしめしている(図-1)。屋敷地は3000m^2ほどあり, 主屋はそのほぼ中央にたち, 他の多くの例と同様に東面する。主屋のほか, 門・離れ座敷・倉・作業場などの建物がある。敷地の南西北面に屋敷林が繁り, 用水がまわる。用水を利用した池もつくられている。屋敷や家の規模からみて, 佐伯家は上層に属する農家であるとおもわれる。この家の主屋は明和4年「家作諸入用一巻」と題する袋と表-1・図-2にあげる5冊の所蔵の家作文書によって, 明和5年(1768)に移築したものであることが知られる。家作文書の内容にはのちに詳しくふれるが, その記載に一部重複があって, すべてを独立した内容をもつ史料とすることはできない。また記載には断片的な部分もある。このため本稿では, 最初に重複する部分や断片的な部分を整理し, 史料の全体をつかみ, 佐伯家明和年間の家作の状況, 特に家作における村人の協同の様子を明らかにしようとするものである。家作における村人の協同の状況は, 民家の建築それ自身と同様に, 地域的な特徴をもち, 時代とともに変化しているとみられ, その地域の社会・経済の状況を反映している。またその家が属している階層によってもたいへん様相を異にしている。そしてこれらの違いが民家に豊富な地域性をもたらしているものと考えられる。民家の家作の方法は, 村人の協同のあり方に基準をおくことによって, いくつかの類型にわけることができると考えられる。本稿はその作業の一部である。佐伯家住宅は, 富山県民家緊急調査の成果にもとづき, 昭和45年に重要文化財に指定され, 家作文書も同時にその付指定となった。本稿は主として, 上記の民家緊急調査のさいにえた資料によっている。また所蔵者の佐伯有久氏, 福岡町教育長堀部芳端氏には家作文書について, 便宜と御教示をえた。記して感謝の意を表する。
- 1972-03-28
著者
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