海外の研究者による日本の学校給食調理労働の評価 : ビデオテープを用いた労働現場紹介と討議の試み
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概要
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本研究の目的は, 国際会議の場でビデオテープディスカッション方式を用いて日本の学校給食調理員の労働負担, 筋骨格系障害の危険の大きさなどの問題について報告し外国人研究者からの評価を集めて検討することを目的とした. 3つの国際会議において, 著者は日本の学校給食調理員の労働に関連した筋骨格系障害に関する報告を行なった. 報告と同時に, 学校給食現場で作業時間に記録したビデオテープを国際会議の参加者に供覧し, 日本の学校給食調理員の労働負担と危険の大きさを質問紙法によって評価させた. 3つの国際学会で21ヵ国から151名の参加者があり, そのうち18ヵ国からの86名が質問紙に回答した. 日本の学校給食調理員の労働負担の大きさを, 0 (easy)から10 (severe) までのVAS法を用いて評価させたところ中央値は8.5であった. 筋骨格系障害の起きる可能性については, 83%の回答者が確実に起きると回答し, 17%の者がその可能性があると答えた. 回答のあった18ヵ国中, 12ヵ国で学校給食が実施されており, これらの国の学校給食調理員では日本と同じように, 筋骨格系障害, 皮膚疾患, 外傷などの職業性疾患が見られた. 日本の学校給食調理員では女性調理員に過大な労働負担が加わっていること, 手作業の機械化が遅れていることなどが指摘された. その一方で, 日本の給食調理場の清潔さ, 食事の内容の充実, 丁寧な調理作業などが高く評価された. 36名の研究者から, 産業医学従事者や医学生などの教育目的でビデオテープを使いたいという入手希望が寄せられた. 以上の結果は, 過去16年間に日本の研究者が得た結論と同様の傾向を示すものであった. ビデオテープディスカッション方式は国際会議で相互理解を深める上で有用であることが示された.
- 1999-05-20
著者
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